『e)文書化され、実行され、維持される」
この要求事項は分かり易い。最高経営層が環境方針を策定した場合、頭の中で思っているだけでなく、文書化することを求めている。
「実行され」とは、文書化した環境方針を実現するためのマネジメントを実行すると解釈することが自然である。
「維持される」とは、一度策定した環境方針を金科玉条のごとく、ただ単に維持することを意味しておらず、適切な時期に適切に見直し、常に最新版であることを求めている。
すなわち、自社を取り巻く環境の変化、自社の内部環境の変化に柔軟に対応する環境方針であり、自社にとって最適な環境方針を維持することと解釈すると、環境方針という環境マネジメントシステムの全てのスタート地点を常に最高経営層が考える習慣を求めていると言えよう。これは、ISOというツールを導入すると、最高経営層が自社の行く末、到達点を常に考え始めるようになるという最大の利点を得ることにもなる。
最近、よく耳にする「ISOのためのISO」とは、ISOが外部に対する何らかの効果があると考え、外部への働きかけとしてのみのメリットを考えるケースかと思料する。外部の評判だけではISOの費用対効果は少ないのではないか。むしろ、内部環境の改善、改革のツールに使えないかと思う。
このように考えると、「過去と他人は変えることができないが、未来と自分は変えることができる」という言葉を思い出す。
ISOは自社の内部を改善し、改革し、思い描く未来を掴むための道具であるということを、この要求事項から感じ取ることができる。