1996年版から2004年版に移行した際に、どのように変化したかを確認する。
1996年版「組織は、その活動、製品又はサービスの環境側面に適用可能な、法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照できるような手順を確立し、維持しなければならない」
2004年版「組織は、次の事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持すること
a)組織の環境側面に関係して適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照する。
b)これらの要求事項を組織の環境側面にどのように適用するかを決定する。
組織は、その環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持するうえで、これらの適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を確実に考慮に入れること。」

赤字が2004年版で追加された内容である。
この要求事項は自分がシステムを構築する際に、最も苦労した部分である。自分が知り得る法的要求事項の範囲だけで十分だろうかという不安があった。このため、環境六法やインターネットで検索したりし、最も時間を要した。
当初は、環境側面に適用可能という表現を勝手に解釈して、著しい環境側面に限定し、それに適用される法律をリストアップする作業と思い込んでいた。しかし、審査において、審査チームリーダーから「著しい環境側面以外の環境側面に適用可能な法的要求事項等はありませんか?無ければ結果的に著しい環境側面のみに適用される法的要求事項だけになったのですね」と質問を受け、はっと気づき、初日の審査後に規格要求事項、参考書を読み返し、環境側面であることに気づき、その日は徹夜で法的及びその他の要求事項を再度洗い出す作業を行った。
翌日の審査の合間で自分の規格の解釈に対する誤解を説明し、その結果、修正した内容をお見せしたところ、「ここでリストアップされた法的及びその他の要求事項を特定した手順が、規格で求めている手順ですので、この手順を維持してください。調べることが多く大変ですが、組織において法規制違反は大変なリスクになるので重要な仕事です。頑張ってください」と審査の合間に励まされたことはとても嬉しかった。

法的及びその他の要求事項は、これまで法律に関与することが少なかった自分のような人間にとっては、法律の条文が分かりにくく苦痛であったが、環境側面をキーワードにして、法的その他の要求事項を検索することで、環境側面そのものの理解も深まることもあり、一番大変な作業は、一番勉強できる作業でもあると思った。
審査ではまさに手順を確立し実施し維持しているかを、手順そのもの、その結果特定されている法的及びその他の要求事項、適用する方法をどのように決定しているかを確認し、規格要求事項を順守しているか、順守している手順どおりに組織が実施しているかを審査するが、審査では問題が小さくとも、改善の余地があるケースも多く、この場合は、改善方法を示唆しない改善の余地を指摘することとなる。
自分の場合、審査して頂いた主任審査員の方が審査スキルだけでなく、相手側から話を導き出し、自ら気づく審査をするスキルを有されていたため、押し付けられたという意識は非常に少なく、むしろ改善のヒントを質問の中に見つけるような質問に感謝する気持ちを持てた。自分も組織が自ら改善の機会に気づき自らが改善する意欲を高める審査スキルを今後は絶対に身に付けたいと思う。