ISO審査員に望まれること

環境や品質マネジメントシステムを審査する審査員は、研修を経て審査員補となり、その後、先輩の審査に同席し学ぶことで審査員に昇格する、さらにその後は先輩の審査員の指導のもと審査の責任者としての訓練を積み重ね、主任審査員に昇格する。

自分がこの過程で先輩から教えられたことは、審査とは第一に規格要求事項(JIS)をベースにすること、同時に組織が定めた手順等をベースにすることであった。
また、審査する前には、組織の仕事内容を十分に理解し審査に臨むことも教えて頂いた。

さらに、審査員の姿勢として聴くことが重要であり、自分が話すことは極力少なくすることも教えて頂いた。
審査員の大半は各業界で活躍されたベテランが多いため、ついつい話すことが多くなるが、話していては相手の状況が見えないからである。そして、重要な言葉として「人様を審査する」ことの重要性を認識しつつ審査することを教えて頂いた。

このように考えて審査をしているが、先日、非常に驚く審査を経験した会社があった。
この会社は業界初と言っていいほどのISOに積極的にチャレンジし、認証を取得したが、その過程にあった審査で、大変な思いをされた。

環境マネジメントシステムで環境側面を特定する手順を確立し、実施し、維持することが求められており、当社は手順を確立し、手順に基づいて環境側面を特定した。その後は、手順に基づいて著しい環境側面も決定した。

審査では手順が確立され、実施され、維持されているかを確認し、JISとの適合性、自社の手順通りの実施の確認を行う。その結果、手順には問題がなかった。

ところが、審査の最終段階である第三者による判定のための会議で、現状の環境側面では分かりにくいという指摘が発生した。
審査リーダーが作成した報告書を読んだだけでは、分かりにくいとのことであったが、リーダーに質問してらちが明かない、そこで組織に質問が行った。

組織は審査の最終会議で認証を推薦するという結論を頂き、環境側面に関する質問をなく、無事終了と思っていたが、思いがけない審査機関からの質問に慌てふためいた。

詳細な経緯は書かないが、何が問題だったかを振り返ると

リーダーが審査チームの意見をまとめられていなかった
リーダーが自分の知識内で審査を行い、分からない点を質問せず、想像の中で審査した
リーダー作成の報告書にリーダーが責任感が乏しかった
審査基準がリーダーの経験であった・・・

様々な原因が考えられる。

このような事態を振り返り、再度JIS Q 17021「適合性評価-マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項」の付属書Dを読みなおした。

・倫理的である
・心が広い
・外交的である
・協力的である
・観察力がある
・知覚が鋭い
・適応性がある
・粘り強い
・決断力がある
・自立的である
・職業人である
・精神的に強い
・計画的である

反面教師と言う言葉がある。自分もこの事例を常に心において、今後の審査に臨むと決意させて頂いた。

そんな決意をさせて頂いた某審査機関の某主任審査員に心からお礼を述べたい。


追伸:このお礼は皮肉の面もあるが、これを皮肉と理解せず、本当にお礼を言っていると感じる感受性の鈍い、あるいは感受性のかけらもない主任審査員でなければ、いいな〜