小坂雄二「憤り」

N家は、貧しいが礼儀正しさ、年長者に対する敬い、正義感の強い一家だった。

K家は、N家と同様に貧しいが、隣のC家やR家の顔色をうかがいながら生活していた。

K家は、隣からの圧力に負けて、僕になりそうになった。

N家は、同様にC家、R家からの圧力を受けていたが、家族全員が力を合わせて、戦いに勝ってきた。

ところが、K家が僕になると、さらにC家やR家の脅威が高まる。

そこで、N家はK家と相談し、結果的に一緒の家族になることを合意した。

貧しいN家は、K家が貧しいので、隣の家に安易に屈服するのだと考え、自分の家族以上にK家の家族のために、様々な投資をした。その投資は、N家の家族をますます貧困にするものであったが、N家の誰からも不満はなかった。

そんなN家は、平和な生活を望んでいたが、別の町内会から次々と、新たな脅威が降りかかるようになった。N家は一念発起し、戦うことを決めたが、財力に限りがあって、最終的に負けてしまった。

負けた途端、K家はまるで、いままでのN家からの保護を忘れたかのように、N家から独立したと叫んだ。

そして、N家に対して、謝罪だけを要求する。

人は、施しを受けた相手に、いつまでも感謝の気持ちを本来は持つ。

その感謝の気持ちを持てない、既に人間としての理性、知性がない。

そんなK家に謝罪だけしかできないN家の新しい家長は、家長を辞めるべきだ。